二酸化炭素を価値のある化合物に変換?!フラーレンポリマーチェーンの特異なナノ空間反応場

環境

・名古屋大学 尾上教授らの研究グループは大阪大学との共同研究で、周期的な凹凸構造をもったフラーレンチェーンからなる薄膜内のナノ空間が、二酸化炭素と水との化学反応を室温かつ大気中で引き起こす特異的な反応場として働く現象を新たに発見した。

室温で CO2を活性化していることから、固定化だけでなく有価物質に変換できる反応場として期待できる。


~この記事のキーワード~

二酸化炭素, 有価物質変換, フラーレンポリマー, 炭素物質, 分子反応場

嫌われもの”の 二酸化炭素 を 価値のある化合物に変換?!


地球温暖化問題という世界全体の最重要課題の解決のために、温室効果ガス、中でもCO2 の大規模削減を実現するための革新的な技術の出現が近年期待されています。

2030 年の世界全体の温室効果ガス排出総量は約 570 億トンになると予想されており、2050 年までに排出量を約300億トン超の削減目標が国際的に定められています。


もし、こんな“嫌われもの”の二酸化炭素を有効利用して“価値のある”物質に変えることのできる技術があったら・・・?

名古屋大学 尾上教授、中谷准教授らの研究グループは、大阪大学 北河准教授らとの共同研究で、周期的な凹凸構造をもったフラーレン(C60)チェーンからなる薄膜内の特異的なナノ空間反応場を利用して、通常起こるはずのない二酸化炭素と水との化学反応を室温かつ大気中で引き起こすことのできる現象を新たに発見しました。

研究成果は、2020年10月7日付けでAdvanced Sustainable Systemsに掲載されました。

Immobilization of CO2 at Room Temperature Using the Specific Sub‐NM Space of 1D Uneven‐Structured C60 Polymer Film
Immobilization and reuse of CO2 are urgent tasks for sustaining the global environment. This article demonstrates that the sub‐nm space of 1D uneven‐structured ...


物質中のナノ空間が創り出す、特異的な分子反応場

フラーレンとは??

ペン兄さん
ペン兄さん

そもそもフラーレンって何ですか??

しろくま先生
しろくま先生

炭素原子60個から構成されているサッカーボールによく似た形をした分子で、ダイヤモンドやグラファイト(黒鉛)の仲間だよ。同じ元素から構成される物質で、異なる化学的・物理的性質を示すもののことを「同素体」というんだ。

ペン兄さん
ペン兄さん

カーボンナノチューブも聞いたことあります!

しろくま先生
しろくま先生

そうだね!カーボンナノチューブも炭素同素体の1つだよ。フラーレンが見つかったののは1985年のことで、アメリカのライス大学とイギリスのサセックス大学の共同研究グループが発見したんだよ。その後に発見者はノーベル化学賞を受賞したほどすごい発見だったんだ。

ペン兄さん
ペン兄さん

そもそもなぜフラーレンって名前になったんですか?

しろくま先生
しろくま先生

発見者の1人はC60の構造をイメージするときに、カナダ・モントリオールで開催された国際博覧会(1967年開催)で展示された特徴的なドームを思い浮かべたそうなんだ。このドームは、アメリカ建築家のバックミンスター・フラー(Buckminster Fuller)という人が設計したんだけど、フラーレン(fullerene)はこの人の名前から取ったんだよ。

ペン兄さん
ペン兄さん

へえ!そんな経緯があったんですね!おもしろい!



ナノメートルサイズの”分子反応場”

ナノメートルサイズの空間をもつゼオライトや金属有機構造体などの多孔性材料は、分子やイオンをためる・交換する・分離する・反応させるなどの特殊な性質を持っています。

このため、合成・医療・電子工学・触媒・エネルギー貯蔵、および環境工学分野へ広く応用されています。

金属有機構造体内のナノスケール多孔質構造を利用した研究を過去に紹介しているので、気になる人はチェックしてみてください。


また、これらのナノポーラス材料を用いたCO2、NOx、SOxなどの環境に有害な化合物の固定化・再利用は、環境・エネルギー問題の解決に大きな役割を担うことが期待されています。

尾上教授らは、これまでフラーレン薄膜に電子線をあてることで、金属的な性質を示す1次元の凹凸 をもったチェーン上のフラーレン構造をつくることができることを発見していました。

フラーレンポリマーの膜は、分子がちょうど通れるくらいの大きさ(1 nm 未満)の小さな空間をもっており、これまでの有機膜では見られなかったような高い電気伝導性・耐熱性といった機能性を示すことがこれまでの研究結果から明らかになっていました。

そこで、電気化学または熱処理を利用することによってナノスペースでの化学反応を促進させるための材料として使えるのでは?? と考えたのです。

フラーレン薄膜 (a) に電子線を照射すると、周期的な凹凸構造をもつフラーレンポリマー (b) が生成します。 Credit: 名古屋大学 尾上研究室


”フラーレンチェーン” の ナノ空間分子反応場 を利用した有価物質変換

周期的な凹凸構造を持つフラーレンチェーンの薄膜は、1 気圧の 100 億分の1に相当する極端にガスの少ない真空状態(超高真空下)で作製されています。

この薄膜を室温に大気にさらすと、どうやら炭酸イオン(CO32–)生成しているらしい、ということが赤外線領域での吸収による分子振動の挙動を調査することで明らかになったのです

さらに、原子・分子・固体の電子状態を求める理論計算手法を駆使してさらに調査を行ったところ、以下の反応が起こっている可能性が示されたのです。

1.二酸化炭素(CO2)分子がナノ空間内で、フラーレンチェーンを橋渡しするように固定化されます。
2.固定化された CO2 分子はいつもとは違った変な体勢を取らされるので、相手から電子を奪いとって安定化したい!といういわゆる「活性化状態」になります(=化学的な反応性が高くなる)。
3.そこに 水(H2O)分子が接近し、反応中間体を介して最終的に炭酸(H2CO3が生成します。



本来であれば、二酸化炭素と水の反応を起こすには活性化させるための大きなエネルギーが必要となるので、室温ではまず起こりません。

しかし今回、周期的な凹凸構造を持つフラーレンチェーンの薄膜内に存在するナノ空間で、この反応が室温で簡単に起こることがわかったのです!

また、同じサイズのナノ空間をもつ通常のフラーレン薄膜を室温で大気にさらしても、CO2とH2O はナノ空間内で反応は起こらなかったことから、ナノ空間を構成している特殊な骨格構造も室温での反応に関与していることが分かりました。

少し変わった構造を持つフラーレンチェーンの薄膜が、二酸化炭素の固定化だけでなく、価値のある物質に変換できる可能性を秘めた特異な反応場を持つという事実は、学術的にみても社会的にみても非常に重要な発見であると言えます。


参考資料

名古屋大学 プレスリリース:1次元凹凸周期構造フラーレンポリマー薄膜内の特異なナノ空間反応場を使って二酸化炭素と水が室温で反応することを発見:二酸化炭素固定・有価物質変換に期待

http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20201027_engg1.pdf


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名古屋大学 工学研究科 エネルギー理工学専攻 尾上研究室
名古屋大学 工学研究科 エネルギー理工学専&#2591...


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(中野研究室 基礎工学研究科 化学工学領域 量子化学工学グループ)

量子化学工学グループ(中野研究室)
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