・米ピッツバーグ大学とメリーランド大学の共同研究チームは、物体が熱くなったときに発せられる”音”を感知することにより物体の温度を測定できる「新しい温度計」の作製に成功した。
・今最も勢いのある産業の1つである量子コンピューター産業への応用が期待されている。
~この記事のキーワード~
温度計測、音響黒体、エネルギー放射、センサー、量子コンピューター
モノの “声” をきく 温度計?!

沸かしたてのお茶をペン太くんがジーっと見ているようです。
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・・・・・・
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あら?ペン太、今何してるの?
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・・・・・・。
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ねえねえ、聞いてる?ペンt・・・
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しっ!!いまお茶の声を聞いてるから静かにして!!
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(またお兄ちゃんに変なこと教わったのかしら??)なにかお話してるの聞こえた?
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んーん、全然聞こえない。
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馬鹿だなあ、ペン太は。お茶が何か喋るわけないじゃん。ずず…
あっつっっ!!!!
「モノの “声” をきく」
と聞くと、なんだかスピリチュアル的なことを想像するかもしれません。
物理学者であるピッツバーグ大学のパーディとメリーランド大学カレッジパーク校のシンらの研究チームは、物体が熱くなったときに発する”音”を感知することにより物体の温度を測定できる「新しい温度計」の作製に成功しました。
研究成果は、2020年9月15日に公開の物理学雑誌 Physical Review Lettersに掲載されています。

熱エネルギー:”吸収” と ”放射”

私たちの目に見えなくても、地球上のあらゆる物体は、絶対零度(-273℃)よりも高い温度であれば例外なく原子レベルで振動しています。
温度が高ければ高くなるほど、物体を構成する最小単位である原子・分子は激しく動きます。
(これが、物質が「熱エネルギーをもっている」という状態です。)
逆に、原子・分子の振動によって電磁波(赤外線エネルギー)を周囲に放出する現象もみられます。(熱放射)
周りからの赤外線エネルギーを受けとることで、自分自身も振動して温まることができます。
おいしい焼き芋を作るときは、フライパンなどを使った直火焼きではなく電気ストーブを使ったりアルミホイルでくるんで炭火焼きしたりするイメージですよね。
これも、熱放射による「遠赤外線」を使ってじっくり温めているんです。

物体からの放射は温度が高いほど多く、放射される赤外線エネルギーの量は温度の4乗に比例します。
放射されたエネルギーが物体に入射すると、一部は反射され、一部は吸収され、残りは透過します。
入射エネルギーをすべて吸収する物体を ”完全黒体” といいます。
金属は電子波を跳ね返す特性があるので自身で吸収は起きませんが、カーボンなどの黒い物質はほとんどのエネルギーを吸収してしまいます。
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夏に黒い服を着ると熱く感じるのは、熱エネルギーの吸収率が他の物質より高いからなんだよ
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じゃあ、アルミホイルで体をぐるぐる巻きにすれば、夏もすずしいってことだね!
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・・・。理論的にはそうなるね。。。
一方で、物体が温まると熱(電磁波)エネルギーだけでなく音エネルギーも放出します。
音エネルギーを 100% の高率で吸収・放出する物体を ”音響黒体“ といいます。
なんと、この “音響黒体” を使うと、モノの声を聞くだけでそのもの自身の温度が直接分かるようになるんです。
“音” を “温度” に変換するしくみ
ピッツバーグ大学とメリーランド大学カレッジパーク校の共同研究チームは、
シリコン基板上に “音のセンサー” となる1ミリ四方の特殊な膜を取り付けることによって、同一基板上に堆積させた対象物質から放出される微弱な“音波”(振動パターン)を検出し温度に変換することに成功しました。
~実験のイメージ~
① “音響黒体” を レーザーで温める 。
➡ シリコン基板上に 音波(振動)が伝わる。
② 伝達された微弱な音波 を 特殊膜(音センサー)で検知(揺らされる)。
③ 極小特殊膜(わずか 1mm2!!)に照射したレーザー光の反射パターンを計測。
➡ 反射パターンから “膜がどれだけ振動しているか?“ を推測。
④ 計測した音響黒体の温度情報と関連づけることで、「音 → 温度」に変換!

音響黒体が高温になるほど大きな音響エネルギーを放出し、特殊膜の振動が強くなることで異なる光の反射パターンが観測できたことを報告しています。
今回の特殊膜の振動の99%が音響黒体に由来すると推定されており、特殊膜自身の温度にはほぼ依存せず検出用レーザーによる「自己発熱」に対する大きな耐性を示すことも確認されています。
被測定物質の自己発熱は、量子コンピューティングデバイスの動作の際に求められるような非常に低い温度環境下(※)では計測精度の低下を引き起こす致命的な原因となりますが、従来の温度計測技術を用いた測定では防ぐことが難しいとされていました。
※最新のテクノロジーをもってしても(2020年4月時点では)、自然界・物質のあらゆる活動が“原子レベルで凍結された“ 極限の温度(-273℃)よりわずか1~2℃ 高い温度でしか動作できません。
量子コンピューター産業は、Google、Intel、IBM、Microsoftといった世界の名だたるIT業界の巨人に加えて数多くのベンチャー企業がこぞって参入している、今最も勢いのある産業の1つです。
著者らは、このような極限状況下において、この新たな“温度計“が将来活用できるのではないかという期待をこめて結論としています。
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(へえ、声で温度がわかるのか・・・。ってことは・・・?)
僕と話してる時の 〇〇ちゃんの声の ”熱量” を調べれば、もしかしたら僕のこと好きかどうかが分かるかも・・??!!
先生、続き詳しく教えてください・・・!!
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ははは・・・また今度ね。。。
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(あらやだ、青春っていいわねえ。)