・米パデュー大学とウェルダン大学の研究チームは、紙や段ボール をキーボードやキーパッドなどの使いやすい ヒューマンマシンインターフェース(HMI)デバイス に変えることができる新たな製造手法を開発。
・軽量で柔軟性があり折りたたむことができると同時に、自己発電式であるため外付けバッテリーや電源が不要である。
・既存の印刷技術を流用できる特殊コーティング技術(オムニフォビックコーティング)を用いており、湿気による急速な劣化やバッテリーへの依存性、既存の量産技術との互換性の低さといった問題を克服。
~この記事のキーワード~
紙から作る、スマートヒューマンマシンインターフェース、オムニフォビックコーティング、自己発電式、完全防水、ワイヤレス通信、ユビキタス時代
紙や段ボールを、キーパッドなどのヒューマンマシンインターフェースデバイスに変える技術を開発

いつでもどこでも意識せずに、情報通信技術を利用することができるユビキタス時代になり、
1人に1台スマートフォンを持つ時代も当たり前になってきました。
入手しやすくどこにでもある紙をベースに電子デバイスを製造することができれば、低コストで環境に優しく、かつ軽量で柔軟性の機能を持たせることができるため近年注目を集めています。
しかし、紙ベースの電子機器開発には、湿気による急速な劣化、バッテリーへの依存性、既存の量産技術との互換性の低さといった問題が山積みです。
もし何の変哲もないふつうの紙をipadに変えられる夢の技術が生まれたら・・・?
米パデュー大学の産業工学部とウェルダン大学の生物医学工学部で助教授を務めるラムゼス・マルティネスらの研究チームは、紙や段ボールを、既存の印刷技術を流用できる特殊加工によってキーボードやキーパッドなどの使いやすいヒューマンマシンインターフェース(HMI)デバイスに変えることができる新たな製造手法を開発しました。
この紙ベースの電子デバイス「RF-SPE」は、完全防水かつ汚れ・ほこりに強く、バッテリー不要でワイヤレス通信ができるという驚くべき機能を備えているといいます。
この研究は、2020年8月23日付で『Nano Energy』に掲載されました。
夢のような時代、もうすぐそこまで来ています!!!!
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ヒューマンマシンインターフェースデバイス・・・うーん、長すぎてよくわからないや・・・
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人間と機械が情報をやり取りするための道具のことを言うよ。あらゆるモノがインターネットにつながるIOT時代にはすごく重要になってくるんだ。
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難しい使い方を覚えなくても、直感的に機械を動かしたりネットワーク・システムにアクセスしたりすることができれば、世の中がもっと便利になりそうですね!!
どこにでもあるただの紙がipadに!?夢を叶える先端コーティング技術
(特徴1)テンキーから音楽の再生パネルまで!好きなデザインが印刷可能!

紙の表面に、撥水機能を付与するためのフッ素系シラン、導電性ナノ粒子、電子親和力が強いポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、電子親和力が弱いエチルセルロースをそれぞれスプレーコーティングにより堆積させていきます。
水や油、ほこりなどをはじいて付着させない特殊コーティング技術(オムニフォビックコーティング)により、塗布したインクが他の層にしみ出ることがないので、複数層の回路を紙に印刷することができます。
ボタンはテンキーから音楽の再生パネルまで自分の好きなデザインを印刷することが可能なようです。
(特徴2)軽くて折りたためる、バッテリーがいらない入力デバイス!
さらに、こうして印刷された入力デバイスは、軽量で柔軟性があり折りたたむことができると同時に、外付けバッテリーや電源が必要ないというのが驚きです。
というのも、ユーザーが紙に触れることで生じる摩擦電気を利用して電力を供給しているようです。
また、入力信号はBluetooth通信によって外部端末に送ることも可能です。
実際に研究チームは、ノートの紙を使って音楽プレーヤーの操作パネルを作り、指でタッチしたりなぞったりするだけで、曲を選んだり、再生したり、音量を上げたり下げたりすることができることを実証しています。
(このことを示したYouTube動画が何本か挙げられており、テンキーを印刷した紙で数字を入力する様子や、音楽の再生パネルを印刷した紙で音量調整や音楽のコントロールをする様子が確認できます。
気になる人は下の動画をチェック!)
・撥水性: https://youtu.be/TfA0d8IpjWU
・テンキーとしての使用例(ワイアレスでPC上に出力): https://youtu.be/J0iCxjicJIQ
・音楽プレーヤー 使用例: https://youtu.be/c9E6vXYtIw0
ここまで便利になる!応用例
このようにして作られたデバイスの電力密度は最大300μW/cm2 と非常に高く(これは、携帯電話基地局のアンテナを含む無線設備から発射される電波の20m先の強度に相当します。)、一回あたりにかかる印刷のコストは30円程におさえられるそうです。
カスタマイズやスケールアップが容易な同技術は、現在さまざまな利用例が考えられています。
(例1)物流での信頼性担保
家に届いた荷物の梱包段ボール表面に指でなぞるだけでサインすることができる(文字認証を行える)ため、所有者であることを正確に識別することができます。
サインパネルは段ボールへ大量印刷が可能で、コストも安く抑えられるので、現実的にみても十分に実現可能であるといえるでしょう。
(例2)食品包装材
食品を安全に消費できるかどうか確認できるスマートパッケージに!
この技術は、従来の大規模印刷プロセスをそのまま使うことができるので、ふつうの段ボール・紙をスマートヒューマンマシンインターフェースに変えられるシステムをすぐに導入できることが期待されています。