・米南カリフォルニア大のチームは、アルコール燃料を動力源としたわずか米粒3粒程度の軽さ(88ミリグラム)の昆虫型マイクロロボットを開発した。
・ワイヤレスかつバッテリーフリーで、体内の燃料を燃やしながら機械エネルギーを取り出せる人工筋肉システムを用いて、最大2時間にわたり前肢で這って進んだり、急斜面を上ったり、背部に荷物を積んで運んだりすることができる。
・陸・海・空すべてを移動できる新世代の自律型マイクロロボットとして、インフラの検査や自然災害後の捜索救助活動などの様々な分野への応用が期待されている。
~この記事のキーワード~
マイクロロボティクス, 人工筋肉, エネルギー変換, 触媒反応, 燃焼, 電池, 合金, 材料開発,
米粒3つ分の軽さ?!バッテリーがいらない極小昆虫型ロボット

米南カリフォルニア大学 ペレス-アランチビアらのチームは、アルコール燃料を動力源としたわずか米粒3粒程度の軽さ(88ミリグラム)の昆虫型マイクロロボットを開発しました。その名も、「ロビートル(RoBeetle)」。
ワイヤレスかつバッテリーフリーで、体の中に入れた燃料を燃やしながら機械エネルギーを取り出すことのできる人工筋肉システムを用いて、最大2時間にわたって前肢で這って進んだり、坂を上ったり、背部に荷物を積んで運んだりすることができるといいます。
研究成果は2020年8月19日付でScience Roboticsに掲載されています。
道路を歩いているときに見かける小さな虫、気づいてないだけで実は極小探査ロボットかもしれません。
もしかして、あなたの服にもついているかも??
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スパイ映画みたいでかっこいいね!!あれ?兄ちゃんの背中になんか虫がついてるよ。
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え・・・??(やばいっ!勉強やらずにゲームやってたことがお母さんにばれてるかも・・・?!)
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・・・・・・(ニコニコ)
お兄ちゃん、あとでちょっと話がしたいんだけど来てくれる??(ニコニコ)
マイクロロボット技術に立ちはだかる大きな壁
最大の敵は、“重力”でした。

このマイクロロボットの重さはわずか3粒の米粒程度ですが、米粒自身が自分で動いたりできないように、当然這って進むには小さいながらも強力な燃料源が必要です。
これまでに開発されている自律型のドローンや小型ロボットの大半は、自信を動かすために必要なモーターはいうまでもなく、電力を必要とするためリチウムイオン電池などのバッテリーを積まなければなりませんでした。
エネルギーを内部に溜め込んでおく材料としてみると、電池はかなりエネルギー密度の低い部類になります(市販の最新小型バッテリーでも1.8 MJ / kg)。
重いわりに、エネルギーをたくさん取り出せないわけです。
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少ししか歩いていないのに、すぐ疲れたって言いだすぼくのお父さんと同じだね。
逆に、昆虫に動力を与える動物性脂肪のエネルギーは約38 MJ / kgで、電池の20倍以上の性能です。
生物が動くための体内に蓄えている脂肪分や、化石燃料の化学的な燃焼などと比べると、リチウム二次電池へ単位体積・質量に潜在的に蓄えておけるエネルギーは格段に低いとされています。
1/20の効率なので、20倍以上は重さが必要になりますよね。
現在利用可能な最小のバッテリーでも、今回開発された体重80ミリグラムの昆虫型ロボットよりも10~20倍重い計算になります。
研究チームのとった戦術とは??
さて、困りました・・・。
この問題を克服するため、研究チームは考えたのです。
ロボットや機械はバッテリーから電気エネルギーを取り出し、機械エネルギーに変えているのに対して、生物は脂肪を燃やすことで機械エネルギーに変えています。
ロボットをより小型化するために昆虫の動く仕組みに着想を得て、液体燃料を燃やして得られる熱エネルギーを力学的なエネルギーに変換できる人工筋肉システムを考案しました。
今回の液体燃料として用いるメタノールは、同じ重さのバッテリーの10倍以上ものエネルギーを蓄えているといいます。
電源につなぐ代わりに、ロボットの体内にメタノールを入れ、人工の微小筋肉に電力を供給することにしたのです。
温度で伸び縮みする。液体燃料で動く人工筋肉!?
人工筋肉には、形状記憶合金(ニッケルチタン合金)ワイヤーを使います。
この合金は、加熱すると筋肉のように収縮し、冷却すると伸びるという特殊な性質を持っています。
さらに、このワイヤーをプラチナでコーティングすることで、接触したメタノール蒸気を燃焼(酸化)させ効率よく熱エネルギーを発生させることができます。
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メタノール燃焼により合金ワイヤーが「縮む」 ➡ 燃料供給が止まって冷えると「伸びる」。この繰り返しによって、ミクロ人工筋肉の動きが生まれるんだ。
触媒による燃焼を自発的に進めるかどうかのコントロールは、合金ワイヤー付近に存在するメタノール濃度により調節しているようです。
(このマイクロロボットにはシャッターがついており、ワイヤーの収縮時にはシャッターが開いてメタノールがワイヤーに供給される一方で、メタノール燃焼が進みワイヤーが伸びるとシャッターが閉まるのでメタノールの供給は止まるような仕組みになっています。)
このようにして、ぐいぐいとロボットの足が動いて、体が前方に這うように進んでいくのです。
YOUTUBE動画はこちら↓
RoBeetle: A Micro Robot Powered by Liquid Fuel
このメタノールの燃焼により発生するエネルギー密度的は、リチウムイオン電池よりはるかに高いそうです。
さまざまな大気条件、表面粗さのレベル、傾斜角など、さまざまな状況でロボットの機能と性能をテストしたところ、ロビートルは自重の最大2.6倍の荷物を背部に積んで急な傾斜でも運ぶことができ、燃料を満載した状態で2時間動作することができたといいます。
これまでの最先端の極小バッテリーを使って動く同じようなタイプのロボットでも、重量が1グラムで、動作時間は約12分しかなかったことを考えると、今回開発されたマイクロロボットの性能の高さがよくわかりますね。

陸・海・空すべてを移動できる新世代の自律型マイクロロボット?!

人間には接近が困難もしくは危険な環境であっても、このマイクロロボットが人間の代わりに検索や監視することが可能になります。
インフラの検査や自然災害後の捜索救助活動などのさまざまな分野への応用が期待できるでしょう。
大きくて重いバッテリーを積み込む必要がなくなるため、これまで開発されていたロボットが大幅にコンパクト化されます。
そのため、狭いスペースに潜り込んだり、高所・急斜面でも楽々よじ登って作業したりすることができるようになります。
昆虫型ロボットの大群が、救助隊として人々を救う日もそう遠くはないでしょう。
さらには、人工授粉や環境モニタリングなどの作業を支援する目的にも使用できるとのことです。
研究チームの究極の目標は、「蝶型」飛行マイクロロボットを作り上げることだそうです。
参考資料
準備中・・・